台湾の街を歩くと、キティやピカチュウといった日本のキャラクターが、(公式にも非公式にも)街のあちこちにあふれ、日本のコミックやドラマはほとんどタイムラグがなく中国語に翻訳され流通している。台湾のネットユーザーによるBlogを見ると、日本でもいま放映中のドラマについて話題が盛り上がっていることに驚かされる。
台湾では、こんな日本の文化を当たり前のように自分たちのものとして吸収して育った世代が、クリエーターとして活躍しはじめている。生命樹多媒体設計を主催する薛??氏もそんな一人だ。
古いビルを自分たちで内装したという彼らのオフィスは、ギャラリーのようにセンス良く演出されている。オフィスの名前について尋ねると、
「私はクリスチャンなんですが、聖書に生命の樹というのが出てくるんです、そこからとりました。」とのこと。名刺には「CREATE
OUT FROM NOTHING」というスローガンも添えられているが、いずれも"根源から創造する"という彼の仕事に対するビジョンが込められている。
キャリアは広告業界でグラフィックデザイナーからスタートし、6年間携わったのち、現在のオフィスを設立、3年目になる。3〜4人のコアスタッフで、Flashアニメーションとそれに付随するHTML制作を中心に仕事を受けている。
現在のクライアントは、3M、マイクロソフト、ディズニーなど大手も多いが、仕事の規模にかかわらず興味を惹かれる仕事は積極的に受けるようにしているという。台湾ではここ数年のうちに、バスや地下鉄に広告用の液晶モニターが増加しているが、そこも彼の活動の場の一つだ。どの仕事からも、彼が楽しんで仕事をこなしているのがよく伝わってくる。
実際に作品を見せて下さい、とお願いすると、オモチャを自慢する子どものように魅力的な笑顔で、仕事以外に作りためた作品も含めて、次々とFlashアニメーションを紹介してくれた。古いTVアニメのキャラクター、特撮映画の着ぐるみ怪獣、最近のホラー映画まで、日本製のキャラクターを使って遊んだプライベートな作品が楽しい。日本人なら世代的な感慨をもって受け止めてしまうキャラクターも、彼らには関係がない。台湾に輸入された時点でリセットされ、等しくジャパニーズ・キャラクターとして消化されてしまう。
「いま台湾セブン-イレブンでは、キティのマグネットが景品としてプレゼントされています。そのためそれをコレクションする人がいたり、家電製品にくっついていたり、あらゆるところにキティが繁殖しています。誰にも愛されてあらゆる場所に存在する、台湾のデザイナーにとってもそんなキャラクターを生み出すことが一つの夢なんじゃないでしょうか。」
実際、彼もキャラクター・デザインがもっとも得意だという。ぼんやりしているとき、場合によっては夢のなかでひらめいたアイデアを常にスケッチしてストックしている。
仕事はクライアントとの共同作業で、ステップごとにオンラインで確認しながら進行するが、キャラクターの動きの演出やセリフの制作まで彼自身が行うことも多い。一貫した作業が彼のディレクションに従って、外部のネットワークまで巻き込んで進められる。
「声のユニークな友人にセリフを読んでもらうこともあるんですよ」
ネットワーク社会では、世界各国の文化的交流は、ほとんどタイムラグなく行われ、今後ますます加速化するだろう。しかしそれを受け入れる国の文化的・歴史的背景によって、消化のされ方はさまざまに異なるはずだ。それがまたフィードバックされグローバルな場所で一つの文化的な土壌が形成されるとしたら、それはどのようなものだろうか。薛氏のハイブリッドなポートフォリオはそんな可能性を予感させてくれた。