2000年1月16日
行政サイトの利用者は、住民、観光客、ビジネス関連など幅広く、かつ求める情報も様々です。住民は税金や各種届け出などの公共情報や生活情報を必要としますし、観光客は地域案内やイベント情報に興味を持つでしょう。それらの情報を的確に、利用者が活用しやすい形で提供できているかどうかが、行政サイトの質を判断する上での鍵です。加えて、インターフェイス・デザインを通してその街の魅力が伝わってくるかどうかも重要な要素といえます。
今回は、世界各国の行政サイトを巡って、その向こうにどのような都市像が見えてくるかを検証してみましょう。
▼ 魅力に欠ける日本の行政サイト
今回調査した日本の主要自治体(東京都、大阪府、名古屋市、札幌市、福岡市、長野市)が運営するサイトには、全て英文サイトがあります。しかしその品質を問われると、とても合格点とは言い難い状況です。
東京都の日本語ウェブサイトにはイラストが使われ、利用者に親しみを持たせようという意志を感じます。ところが英文サイトに目を移すと、シンプルと言うより寂しい印象で、世界有数の国際都市の公式サイトとしては物足りません。内容は生活、歴史、観光などいくつかの分野を扱っていますが、箇条書きで資料が並べてあるだけという印象で、サーチ機能も無く、欲しい情報になかなか行き着きません。外国人に対してアピールする魅力も、使って便利だという機能性もなく、公開している積極的な理由があまり見あたりません。
一方ニューヨークのサイトを訪れると、トップページに摩天楼をとらえた鮮やかな航空写真が配置され、ニューヨークという都市を効果的に印象付けています。ページのレイアウトも良く整理され、プルダウンメニューやサーチを使って、必要な情報が引き出しやすくなっています。アップデートも頻繁に行われており、世界中のユーザーに対して、"是非見て使ってほしい"と言う積極的な姿勢が感じられます。
▼ 都市の個性をアピールする
地方都市は独自の個性を見せることで、実際に訪れたこともなく予備知識も乏しい海外ユーザーにも関心をもたせることが可能です。
福岡市のサイトは、日本語・英文サイトともほぼ同じ構成で、すっきりしていて見やすく、好感が持てます。トップページに"アジアとの交流"というカテゴリーを設け、関連する活動を紹介しています。この項目はサイト内で大きな部分を占め、アジアとの交流に力を入れる福岡市の個性をアピールしています。このように、情報の見せ方や切り口の工夫次第で、その都市ならではの独自性を主張できるはずです。
ソルトレイクシティーのサイトでは、冬季オリンピックを来年にひかえ、そのためのイメージづくりの努力が感じられます。トップページの美しい景観写真が自動で切り替わるようにデザインして視覚的に引きつけようとしているほか、ソルトレイクシティーが住みやすい都市として取りあげられたことを積極的にアピールしています。しかしまだ地味であり、オリンピック開催予定地としてはもっと派手に見せてもよいでしょう。
▼ 誰のための情報か
行政サイトは幅広いターゲットに対して情報を提供する必要性があるため、いかに必要な情報に効率的にアクセスできるかどうか、ナビゲーションの質が問われます。
名古屋市の英文サイトには、“Introducing Nagoya”と“Nagoya My Town”という項目がそれぞれあります。内容も長い文章の羅列だけで、両者の機能区分が不明確です。これらが誰に向けて公開されている情報なのかわかりません。
その点ボストンのサイトは、トップページに“residents”、“businesses”、“visitors”と、ユーザーの立場に立った3つのメニューが用意されています。シンプルですが、その分誰にでもわかりやすく、目的の情報に迷わずたどり着くことができます。様々な方法が考えられますが、ユーザーの視点をインターフェイスに反映させることが、より使いやすいサイト作りには必要です。
アメリカの行政サイトでは、各種オンライン・サービスの提供もすすんでいます。シアトルやボストンのサイトでは、各種サービスの申請書が揃えてあるだけではなく、駐車違反の罰金までオンラインで振りこむことができます。
▼ もっと大胆に演出を
海外に目を向けると、自らの街をアピールしようという意識と姿勢が感じられるサイトに出会います。パリはパノラマ写真などを用いた芸術の都らしい演出、ボストンは歴史的な素材を使ったバーチャル・ツアー、ヘルシンキではビジネスのしやすい都市としての姿をトップページでアピールしています。
日本の行政サイトは、概して住民に対しても観光客に対しても、アピールが少なく控えめです。テキスト情報もそうですが、デザインや画像の扱いについても同じことがいえ、手持ちの写真を並べただけと思わせるサイトが目につきます。もっと大胆に個性をアピールしても良いのではないでしょうか。
▼ 世界の都市サイト比較
【アメリカ】
●ニューヨーク
http://www.ci.nyc.ny.us
ポータルサイトのように堂々としている。情報量は多いものの、デザインがすっきりしていて使いやすい。市長の会見(動画)が頻繁に更新されている。
●ボストン
http://www.ci.boston.ma.us
全体のデザインが統一され、良く整理されたサイト。ユーザー別のメニューが参考になる。
●シアトル
http://www.ci.seattle.wa.us
トップページから情報で埋まっているものの、ポータルサイトのように整理されているため、煩雑な印象はない。トップに最新記事が並び、ニュース性も高い。
【ヨーロッパ】
●パリ
http://www.paris-france.org
英文Webサイトのはずが、フランス語と併記されている。ナビゲーションも使いやすいとは言えない。しかし、動画や写真を使って、パリをアピールしようとする姿勢は伝わってくる。
●ヘルシンキ
http://www.hel.fi/english
情報量は多いが、北欧らしいすっきりとしたデザインで見やすい。サイトは英語、ドイツ語を含め、4カ国語がそろっている。
【日本】
●東京都(英文サイト)
http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/english/englishindex.htm
第一印象でアピールするものが何もない。情報量はあるので、インターフェイスのデザイン次第で“利用される”サイトになるのでは。英文に関しては、かなり改善の必要あり。
●大阪府(英文サイト)
http://www.pref.osaka.jp/indexe.html
特別格好良くもなければ、使いやすくもない。バーチャル・ツアーがあるが、写真と情報が並べてあるだけ。
●福岡市(英文サイト)
http://www.city.fukuoka.jp/index-e.htm
日本語版と英文版に共通の構成・デザイン・レイアウトが使われ、見やすい。サーチ機能やメニューの見せ方など、ナビゲーションに工夫がほしい。
●名古屋市(英文サイト)
http://www.city.nagoya.jp/indexe.htm
日本語版に比べて英文版の情報量が乏しい。英文本文も、文章が羅列されているにとどまっている。
●札幌市(グローバル・サイト)
http://www.global.city.sapporo.jp
グローバル・バージョンとして、英文の他に中国語と韓国語の情報あり。“Web City”と名付けられたサイト構成も、日本の自治体サイトの中では珍しく、積極的な取り組みを感じさせる。
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