2002年5月20日
▼ 米大手老舗銀行のウェブサイト
創業150周年を迎える、米大手銀行Wells Fargoは、1999年から現在に至るまで、インターネット関連事業の開発に9億ドル近くを費やしています。これだけ費用を掛けながら、部門単体としては利益を上げるつもりは無いと、インターネット事業部門のオステラー氏は語っています。しかし一方で最近の好調な業績を支えている一つの要因として、顧客用ウェブサイトの役割を高く評価しています。2001年度純益は36億ドルに達し、前年度から16%増となっています。
Wells Fargoでは現在、オンライン・バンキング利用可能なユーザが約300万人おり、その全取引数のうち半分程度が、実際にオンライン経由となっています。同じ米大手銀行Bank of America(
http://www.bankofamerica.com/)では、オンライン経由の取引数は約30%に留まっているのが現状です。従来の取引からオンライン・バンキングへの移行率を見ても、Wells Fargoの約33%に対して、Bank of Americaでは、26%に留まっています。なぜWells Fargoは、ここまで他行と差をつけることができたのでしょうか。
▼ シンプルで明確なデザイン
多くの銀行サイトのトップページは、シンプルで機能的なものが多いようです。 例えば単純に振り込みをしたいだけの利用者に、トップページで関係のない情報を過剰に提供する必要はありません。繰り返し特定の機能を利用するケースの多い銀行サイトの利用者は、目的のページにいかに素早くアクセスできるかを重視しています。競合するBank of America、Fleet Bank(
http://www.fleet.com/)のサイトを見ても、簡潔で機能的なインターフェイスという点では共通しています。これは利用者の立場に立ってウェブサイトのユーザビリティを追求した結果であると言えるでしょう。
Wells Fargoのウェブサイトは、各セクションの細部まで見ると全体はかなりのページ数で構成されていますが、トップページや各扉ページの、目的別に分かりやすくジャンル分けされたナビゲーションを使い、スムーズにサイト内を移動することが出来ます。トップページには、利用者別に「個人用」「投資用」「中小企業用」「法人用」といった入り口がもうけられていますが、Bank of America、Fleet Bankでも主要なメニューは共通で、その他にHome(住宅ローン)やEducation(教育ローン)等、利用度の高い商品をメニュー化し、各行を特徴付けています。
▼ オンライン特有の機能
サイトの見た目がシンプルであっても、もちろん使いやすく、機能的に充実してなくては、オンライン・バンキング・サイトとしては、成り立ちません。 例えばWells Fargoのサイトでは、ローンの希望者は担当者とその場でチャットすることが可能です。多少難しい商品やサービスとなると、電話より、逆にチャットの方が、好まれる場合があります。電話口で、オペレータに難しい言葉を早口で言われるより、文章がスクリーンに出てきたほうが分かりやすい場合があるからです。案内等のURLもオンライン上でやり取りしたほうが、電話口で伝えるよりはるかに楽で間違いも少なくなります。最近のコールセンターやCRM(カスタマー・リレーション・マネージメント)製品では、電話とWebをくみ合わせたものが多く出ています。将来的には、これらが融合されていくことは、間違い無いでしょう。
もちろん、振込みや引き落とし情報等もリアルタイムで見ることが可能であり、これら記録の確認(明細等)を通常紙ベースで行われてきたものを、CD-ROMベースで受け取ることも可能です。PC上でファイナンシャル・プランニングをしている顧客等には、大変便利なサービスとなっています。
投資家のためには、リアルタイムに株価情報を公開し、Wells Fargo Brokerageを通して投資も可能であり、また、ユニークなサービスとしては、個人でオンライン・ショップを開設している利用者に対して、クレジットカード決済機能を提供しています。誰でもインターネットで物が売れる時代に、銀行を通してそのようなサービスが利用できるとなると、さらにEcommerceへ進出しやすくなるはずです。
▼ オンラインとリアルの融合
顧客は、オンラインでサービスを利用したいのか、オフラインで利用したいのかを、あらかじめ決めているわけではありません。むしろ、オンラインとオフラインの両方を、同じように使えるものと思っています。オンラインとオフラインのサービス内容に差があっては顧客の混乱を招くでしょう。Wells Fargoのサイトでは両方で同じことができることが基本となっており、現在では、新規普通預金口座を開設する顧客は、オンライン・バンキング・サービスに自動的に登録されるようになっています。
顧客としてはローンなどの契約となると、実際に支店を訪れて契約を結ぶケースが多いようです。重要な決断の際には、人と人とのやりとりの方が、安心感を与えるようです。しかし現在では、7〜8割は、ウェブサイトでまず勉強してから来店します。直接オンライン上の売り上げにはならなくても、契約に至るまでのプロセスにおいて重要な役割を占めていることは、間違いありません。事前に勉強してくるため、来店時の作業もよりスムーズに運ぶことが多いようです。
▼ オンライン・サービスは当たり前
“オンラインは当たり前”と言う意識が、Wells Fargoにはあります。別に特別なことをやっているわけではなく、当たり前にインターネットを活用していると言っているようです。ウェブサイトが宣伝媒体やチャネルとなって、売り上げに貢献することはもちろんですが、現在重要視されているのが、顧客数維持率と既存顧客から見込む売り上げ増加です。Wells Fargoによると、顧客がオンライン・バンキングに頼っているほど、他の銀行に乗り移ることを、ためらうそうです。一度サイトの使い勝手に慣れてしまうと、他行への乗り換えに消極的になるようです。また、オンライン・ユーザはウェブサイトにログオンすることに慣れ、普通の来店者と比べ銀行機能を使うことが長くなり、別サービスを購入することが従来の銀行利用者より50%程多いそうです。そのため、銀行側としては常に良いサービスを提供し、顧客がオンライン・バンキングを活用してもらうことが重要となります。それら既存顧客に複数のサービスを売ることが、売り上げ増加に繋がります。そのためウェブサイトは支店同様、そのサービスや居心地を常に意識しなくてはなりません。またそのサービス精神が当たり前であり、銀行にとって、顧客を引き付ける大きな要因となっているわけです。
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