Dr. KUBOのウェブサイト診断
「NETFLIX」DVDレンタルサイト
NETFLIX(ネットフリックス)は、現在会員を60万人以上を要する、世界で最初で最大のDVDレンタルサイトです。DVDの普及と同時に、会員登録数が飛躍的に伸び続け、2002年5月にはIPOも果たしました(NASDAQ)。最近では珍しい、元気があるドットコム企業です。
NETFLIXは、ウェブサイトとUS Postal(郵便)を使った、新しい形のレンタルビジネスを運営しています。簡単に流れを説明しますと、ユーザはウェブサイト上で映画のタイトルを閲覧し、選択します。そして選択されたDVDが、ユーザの元に郵便で届きます。ここまでは"何が特別なの?"と思うかもしれません。このビジネスモデルにおいて、面白いのはサービスと料金の仕組みです。
読者の皆様の中でも、レンタルビデオを返し忘れ、延滞金で痛い目にあったかたは、いらっしゃいませんか?。私は、延滞金が"ビデオが買えたのでは"と言う値段になってしまったこともあります(かなり悔しい思いをしますよね。)。この問題を解消するのがNETFLIXです。ユーザは毎月定額$20を支払えばDVDは借り放題となります。定額料金のため延滞料金は絶対に発生しません。なぜ通常のレンタルサービスのように、延滞料金が発生しないかと言うと、ユーザはDVDを3枚以上手元に置いておくことはできないと言う規制があるからです。最初に3本借りて、一本返すと、次にまた新しく1枚届くと言う「交換」システムです(返却時の郵送費用はNETFLIX負担)。映画をNETFLIXサイト上の"借りたいリスト"に登録しておくと、DVDを返却した時点でまた自動的に送られてきます。3枚のDVDが常に手元にあり、それが返却と同時に補充されていくのです。この「交換」制度が成り立っている限り、延滞料金は発生しないのです。
▼ 簡単な操作と利便性
操作は至って簡単です。初回はユーザ登録等が必要ですが、2回目以降は非常に簡潔になっています。まずIDとパスワードの入力、そしてリストになっている映画のチラシ(画像)の下に設置してある"Rent(借りる)"ボタンを押すだけです。そうすると、その映画は自分専用の"借りる予定"リストに追加され、1-2日で自宅まで送られてきます。既に3枚DVDを保有している場合は、返却確認時に代わりのDVDが送られてきます。ユーザは好きな時間に、見たい映画を探し出し、ボタンを一つ押すだけで全てのサービスが完結します。もちろんリストの編集や借りる順番やタイトルの削除は、あとから行えます。
料金も定額なので、つい"借りる予定"リストが増えてしまいます。見終わったら次に見たいものが送られて来ると、なんとも映画好きにはたまらないシステムです。自分専用の映画図書館がPC上にあるのと一緒なのですから。もう遠い店舗に借りに行くことや、返しにいくことが必要なくなります。
▼ 膨大なデータベース
もう一つの強みがDVDの本数。店舗における枚数はやはり限界があります。NETFLIXサイトでは現在11,500タイトルを揃えています。これだけ多いと煩雑になり、検索が大変なのでは?と思いますが、そうでもありません。誰にでも分るカテゴリ分けがしてあり、意外とストレス無く欲しいDVDタイトルを探せます。アクション、コメディー、男優別、女優別等カテゴリがあり、次から次へと出てくる映画のタイトルに見入ってしまいます。
ナビゲーションやレイアウトに関して目立った仕組みは無く、分りやすくしっかり作ってあるなという印象です。デザインもおとなしく、目を引くビジュアル要素もありません。やはりサイトの売りは、商品である「映画」なのです。映画のチラシやジャケットの画像があれば、それだけでユーザを説得させることが可能です。ユーザはチラシを見るだけで、映画会社が何億円と掛けた広告や、人から聞いた評判を思い出すことでしょう。サイトとしては、いかに簡単に借りれるかを強調すれば良いのです。
例えば、公開したばかりの『スターウォーズ』。まだ見ていなかったシリーズの旧作を借りようと検索します。"借りる"ボタンを押すと、同ページに『スターウォーズ』を見たい人が、好きそうな映画(例えば『パールハーバー』など)がリストアップされています。見ていない作品があれば、つい"借りる"ボタンを押してしまいます。借り放題と言われると、借りたほうが得と思ってどんどん"借りる"ボタンを押してしまう、というユーザ心理をうまくついたインターフェイス設計となっています。また、まだDVD化されていない公開中の新作も先行して予約が可能で、「借りる予定」リストに登録することもできます。リストに置いておけば、DVD化された時点で届けられるのです。
▼ 顧客の声の取り込み
NETFLIXでは顧客の声を大切にし、コンテンツに反映させています。 例えば各作品に対して、多くのコメントが掲載されています。その中には著名な映画評論家の評論もあれば、ユーザから寄せられた批評も掲載されています。ここでは、借りる前に様々な意見を参考にできるわけです。
またこのコメントに対して「役に立つ」または「役に立たない」と言うように投票もできます。あるコメントに「役に立つ」と言う声が多いと、あまり価値の無い情報だと判断できます。偏った情報だけではなく、多くの利用者の様々な視点からの意見が聞けるのです。ユーザの声が溜まれば溜まるほどサイトの充実度が増す、ユーザ参加度が高いサイトとなっています。
▼ 自分専用のサイト
NETFLLIXはユーザ別に映画の好みを覚え、ユーザが好きそうな映画を薦めてくれます。ユーザの借りた映画、サイト上に寄せた映画に対する評論の数等から、ユーザの好みを算出します。ログオンするたびに、サイトでは各ユーザ別にお勧めリストを提示してくれます。サイトを使うことによって、よりユーザの好みに合ったサイトへと成長して行くシステムとなっています。
▼ カスタマーサポート
カスタマーサポート面の充実度と手軽さもこのビジネスの成功の一つです。例えばDVDが配送中に行方不明になり、届かないとします。サイトから「届いてません」ボタンを押すだけで、再度郵送されてきます。面倒なステップも、難しい質問もありません。これはDVDが壊れていた、再生できない、といった場合でも同じです。実際ウェブサイトのサポートは、手間が多いだけで分りにくく、不安を抱くユーザも多いはずです。こうしたサポートの快適さがNETFLLIXの急成長の大きな要因となっています。
▼ バックエンドの充実
NETFLIXでは、より多くのユーザにより早くDVDを配送しようと、アトランタ、ボストン、デンバー、デトロイト、デンバー、ヒューストン、ロスアンジェルス、ミネアポリス、ニューヨーク、シアトル、とワシントンDCに新たな配送センターを設けました。今まではカリフォルニア州のサンホゼにある配送センターで全ての配送業務が一括して行われていましたが、今後は全米各地で分散した配送が可能となり、ボリュームとスピードアップが期待されます。この新しい配送センターにより一日100万件のDVDレンタルの処理が可能だと予測されています。サイトの会員数増加に伴い、バックエンドも充実させ、サービスの品質向上にも精力的に力を注いでいます。
▼ ライバル/リアルとの勝負
現在NETFLIXを真似た、二番煎じのサイトも出てきており、今後競争が激化するのは必至だと思われます。既にNETFLIXの約半額の価格でサービスを始めてるライバルサイト「DVD BARN(www.dvdbarn.com)」もあります。しかしDVDのタイトル数や会員数では、NETFLIXに遠く及ばないのが現状です。サイトの使い勝手等もまだまだであり、そこまで強力な競合とは、なっていません。最も強力な競合と考えられているのは、既存のレンタルDVD(ビデオ)店です。米国最大手ビデオレンタルチェーンの「Blockbuster」は、NETFLIX同様の料金システムの導入を検討しています(インターネットは使いませんが、定額料金システムを採用)。インターネット上のライバルより、既存店との競争でNETFLIXの真価が問われるはずです。
▼ サービスの中のウェブサイト
最近元気のある企業が少なかったドットコム企業の中で、NETFLIXは健闘していると言えるでしょう。しかし上場を果たしたとは言え、まだ黒字化には到っていません。そのため、今後の会員数増加が期待されています。 多くのイーコマースは、既存のサービスをウェブに置き換える、というレベルにとどまっていました。NETFLIXはさらに、全く新しいレンタルシステムを提案することに成功しました。NETFLIXが普通に1本単位の料金設定にしていたら、全く注目されずに終わっていたでしょう。ウェブサイト自体の完成度や使いやすさはもちろん重要となりますが、そのウェブサイトを使っていかに魅力的なサービスを実現するかが、ドットコム企業成功のポイントとなるでしょう。"良いサイトを作ろう"と言う意識も、もちろん必要ですが、"良いサービスを提供しよう"と言う意識こそが原点です。高品質のサイト、快適なサポート体制、バックエンド及び料金体系などの要素が、顧客サービスと結びついて初めて、多くの人が使いたいサービス/サイトが育っていくのではないでしょうか。
